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ジーマミーの岡山濃厚農耕記

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農業新時代の技術・技能伝承〜ICTによる営農可視化と人材育成〜 農林統計出版

南石 晃明・藤井 吉隆 編著

農業経営主体の変化

2010年世界農林業センサス」(農林水産省 2011)によれば、農業を行う「法人化している経営体」は21,627あり、過去5年間で13%増加した。このうち、株式会社(特例有限会社含む)が全体の6割を占めており,過去5年間で2割増加している。農事組合法人は全体の2割を占め、5割増加している。株式会社と農事組合法人で全体の8割弱を占めており,会社法人のうち6割は「農業生産法人」である(南石 2012)。

なお、「平成24年経済センサス」(総務省 2013)によれば、企業産業小分類が「農業」に分類される事業所数は21.059(うち会社企業は16,142),企業数は18,445(うち会社企業数は13,800)に達している。両センサスは、調査対象や定義は必ずしも一致しないが、農業を営む「中小企業」(小規模・零細企業含む)が一定の層を形成していることを示している。

農業法人のうち農地取得等が可能な「農業生産法人」は、昭和40年代から緩やかに増加傾向を示していたが,平成10年前後から増加傾向が顕著となり,過去40年間で4倍になり,現在14,333法人ある。法人形態別では、73%が会社法人であり、27%が農事組合法人である。会社法人では、特例有限会社が最も多いが,会社法制定(2006年5月施行)により有限会社制度が廃止され、最近では株式会社が増加している。主要業種別に見ると、米麦作が39%で最も多く,そ菜が19%でこれについでいる,畜産が最も多い時期もあったが,米麦作が急速に増加し最近では畜産を上回っている(南石 2012)。

平成24年の新規就農者は56,480人であり,このうち新規自営農業就農者数は44,980人,新規雇用就農者は8,490人,新規参入者は3,010人である。新規学卒就農者は、新規自営農業就農者の29%(1,330人), 新規雇用就農者の17% (1,410人)である。

新規自営農業就農者数,新規雇用就農者、新規参入者を合わせた最近の新規就農者は、5.81(平成23年) ~5.46(平成22年)万人であり、そのうち40歳以上が7~8割を占めている。39歳以下は2~3割であり、このうちおおむね3~4割程度が新規学卒就農者と推測される(南石ら 2014)。

このことは、新規就農者の9割以上が農業以外の職業を経験した後に就農しており,その多くが学校(高校,専門学校,短期大学、大学校、大学等)で農業・農学系の教育訓練を受けておらず,新規就農者の多くは就農後に農業技術・技能をゼロから習得している状況があることを示唆している。

さらに,現在の農業人材育成制度は、急激な経営形態の変化や技術進歩に十分に対応できていない点もある。このため、農業・農学系の教育訓練を受けていても,新規就農務の技術・技能が十分でなく,これらの伝承・向上が重要な課題となっている。

このように,農業技術・技能伝承の問題は,農業人材育成の問題と不可分であることが分かる。

4.経営規模拡大と経営間格差一滋賀県における水田作経営の実態―-|
1) 経営規模拡大に伴う経営管理領域の拡大

わが国の水田農業において従来から中心的役割を果たしてきた家族経営に加えて雇用型法人経営や集落営農が増加しており, 滋賀県においても,水田農業の担い手として、これらの経営の成長・発展に対する期待が高まっている。

2010年世界農林業センサスによると滋賀県内の経営耕地面積規模別の農業経営体数は、5ha以下の経営体数が減少する一方で5ha以上の経営体数が増加し,とりわけ30ha以上の規模階層では経営体数が2005年対比80%以上増加するなど急速なテンポで大規模水田作経営の形成が進展している。

また,2007年から経営所得安定対策などの新たな政策導入が進む中で,集落営農が水田農業の新たな担い手として位置づけられ,特定農業団体や集落営農法人等の増加が顕著となっている。

しかし、これらの経営では親子間を中心とした血縁関係の中で営まれる家族経営とは異なり、非農家出身者などの従業員(雇用型法人経営)や集落内の農家(集落営農)等複数の構成員により組織的な農業経営が営まれているという点に大きな相違がある。雇用型法人経営は今後も増加が想定され,水田作経営が歴史的に大きな転換期を迎えようとしているといっても過言ではない。

現代の稲作は、1970年代以降の田植機、コンバイン、トラクタの普及により主要な農作業の機械化が進展しており、近年では、電子機器を利用した自動制御等により操作性の向上などの高性能化が進んでいる。しかし、農業生産において安定した収量・品質を確保するためには、緻密な機械操作や五感を駆使した作業判断など高度な知識・技能が要求される。また、農業生産は相互につながりのある作業工程の中で圃場条件や気象条件にて的確に作業することが要求される

このため、複数の構成員により組織的な農業生産を営む上では、構成員の能力養成や組織的な生産活動の仕組みを構築するなどの取り組みに対する重要性が高まっている。したがって、雇用型法人経営や集落営農などの組織を単位とした経営では、家族経営と比べて生産・労務管理の局面で経営管理領域が拡大していると言える。

また,近年,米価低落により水田作経営を取り巻く経営環境は悪化しており,またTPPに代表される貿易自由化により米価の先行きに対する不透明感が高まる中,生産場面では、今まで以上に、収量・品質の向上や作業時間・コストの削減など生産性の向上を図ることが不可欠となっている。

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